そしてぼくが思うに、一番差がつくのは、わからなかった問題の解説を読むときの姿勢です。わからなかった問題の解説を読んだ直後、自分は本当にその解き方を再現できるのか、自問自答してみてください。確かに、模範解答の内容を追うことはできるかもしれません。それでも十分すごいことです。ただ、解説の正しさを理解して記憶することと、解説と同じようなことを自分の頭で完全に再現できることとの間には、大きな隔たりがあります。そしてその差が、見たことのない難しい問題に出会ったときに、現れてしまいます。
具体例を出しましょう。
$$abc = a+b+cを満たす自然数(a,b,c)
\\の組をすべて求めよ。$$
まずは少し考えてみてください。
<模範解答>
$$ a \leq b \leq c と大小関係を設定すると、
\\a+b+c \leq 3c $$
$$ よって、abc \leq 3c 、
\\つまり ab \leq 3 $$
$$ 従って(a,b) = (1,1),(1,2),(1,3)
\\を調べあげればよく・・・$$
さて、この解法を正しいと理解することは、比較的簡単です。ただ、これと同じような考え方を使う問題に再び出会ったとき、解ける自信はありますか? もっと言うと、一時間後に同じ問題を出されたとき、この答案を再現することはできるでしょうか? もしかしたら、大小関係を設定するというところを暗記していて、どっち向きの不等式を作るんだっけと色々試した結果、なぜか都合のいい不等式ができて解けていた、そんな感じになっているかもしれません。そのくらいの理解では、もっと難しい問題を前にしてボロが出てしまいます。
なぜこうなるのかというと、この解法が、数学的に正しいことはわかっても、感覚的に何をやっているかわからないから、つまり自然な思考の産物ではないから、です。模範解答には途中の試行錯誤やあって然るべき発想のステップが書かれていません。解説を読むときに意識したいのは、その見えない思考の過程を補い、「どうしたら自分でこの解法を思い至れたか」を、自分でしっくりくるまで突き詰めることです。
<思考の過程>
a,b,cに色々と数を入れてみると、a,b,cがすべて大きな数のとき、abcの方がa+b+cよりも大きくなってしまうことがわかる。これは、大抵の場合掛け算の方が足し算よりも大きい数になることを考えれば当たり前っちゃ当たり前だ。すると、a,b,cが小さい数のとき、つまり掛け算が足し算を追い抜かす前までの範囲で考えれば十分だろう。じゃあ、具体的にa,b,cはどれくらい小さければいいのか。
a,b,cの中で一番大きいものを考えよう。その値をnとすると、三つの数を足し算した値は高々3nだ。そしてこの3nは三つの数を掛け算して得られる値以上である。だったら、n以外の残りの二つの数の積は3以下だから、かなり絞れるぞ・・・。
こう考えると、この問題の本質は大小関係を設定するという便利なテクニックではなく、大抵の場合掛け算の方が足し算よりも大きくなるという感覚的にも頷ける事実であることがわかってきます。それさえ習得すれば、たとえ一週間後でも、解答を再現することができるようになるのではないでしょうか。
そして、どうしてそういう解法をとるのかの理屈をおさえておけば、難しい問題に出会ったときも自然な思考の結果として方針を立てることができるはずです。
だからみなさんにお伝えしたいのは、わからなかった問題、もっと言うと、なんとなく解けてしまった問題に対しても、「どうしてこれで解けるのか」「どうしてこの解き方を思いつくのか」をじっくり考えながら勉強しよう、ということです。
これは、はじめのうちは手間も時間もかかりますし、妥協せずにちゃんと考えるというのは案外大変で疲れることです。ただ、これはセンスなどではなく、やる気や根気の問題だとおもいます。そして学習内容が深まっていき、数学的な考え方を自分のものにできたら、数学の問題を解くこと、考えることは楽しくなってくるはずです。ぜひ、気合いを入れて、がんばってみてください!
まとめ
・問題を解きまくり、計算方法や定理の使い方を頭に染み込ませる。
・解けなかった問題の解答を読むとき、今後自分の思考で再現できるよう、どうしてその解法が思いつくのかを追究する。
おまけ
・三平方の定理の別証明
下の三角形で相似比がAB:BC:CAの直角三角形の三つ組を見つけ、面積比が相似比の二乗に比例することを考える。
・難しい類題
$$ ab + bc + ca = abc + 1 を満たす自然数(a,b,c)
\\の組を全て求めよ。$$